RRP
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レンブラントの作品をめぐっては多くの謎がありますが、その謎を解くうえでの最も有効な手がかりは、実は彼の絵画そのものでした。レンブラント・リサーチ・プロジェクト(RRP)は、使用されている技法などをもとに、レンブラントの作品とされる絵画の丹念な分析を試みました。その結果、実に驚くべき判定結果が出されることとなりました。RRPの近年の研究によるレンブラント絵画の作品の帰属の変動と、旧来のレンブラント像の解体の現状を伝えます。
 レンブラント・リサーチ・プロジェクト(1)    レンブラント・リサーチ・プロジェクト(2)    レンブラント・リサーチ・プロジェクト(3)
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「レンブラント」という名前から、まず何が想像されるだろうか。自己の精神を見つめ続けた自画像の鋭い眼差し、肖像画や物語画に現れる人物の生き生きとした姿、大胆なタッチによる劇的な明暗描写……これらの要素は現在にいたるまで、レンブラント芸術を語る上で重要な位置を占めている。しかし、近年のレンブラント研究は、我々が思い描いている「レンブラント」というイメージそのものを大きく変えようとしているのだ。
「レンブラント工房の画家」
ベルリン国立美術館に『黄金の兜をかぶった男』という油彩画が展示されている。いかめしい顔をした男がかぶるその兜に見られる絵の具の厚塗りなど、レンブラント独特の画法の認められる傑作として賞賛されてきた作品だ。
だが、1985年の同美術館による調査の結果、この作品はレンブラント自身のものではなく、「レンブラント工房の画家による作品」と判断されたのだ。この作品判定は世界中の美術愛好家を大いに驚かせた。今までレンブラントの傑作であることを疑われることのなかった作品のプレートから、この巨匠の名前が消えてしまったのだから。
このような作品判定の大転換は、この作品だけにとどまらない。レンブラントを所蔵する他の多くの美術館でも、かつてレンブラントの代表作とされてきた作品が、レンブラント以外の芸術家の手によるものと判断される例が増えているのだ。
なぜこのような現象が起きているのだろうか。もちろん、最新の技術を用いた科学的調査や、過去の資料の洗い直しの結果、より正確な判定が可能になったことも確かだ。だが同時に、この逆転現象は、20世紀後半に起こったレンブラント研究の一大潮流の中に位置づけられるものでもある。そして、その潮流の基となったのが「レンブラント・リサーチ・プロジェクト」(RRP)であった。


レンブラント・リサーチ・プロジェクト
RRPはオランダの美術史家たちによって1968年に結成された研究グループである。彼らは、世界中に存在する厖大な「レンブラント風」の作品に対して、作品判定の徹底的な洗い直しを敢行した。彼らの調査は現在でも進行しており、1980年代に3巻にわたる膨大な報告書が刊行されている。この報告書(Corpus, I-III)の中でRRPは、1625年から1642年の間に制作された絵画に対して、レンブラントの真筆か否かについて、統一的な視点に則って判断を下している。
RRPは、調査対象とした作品をそれぞれA(レンブラントの真筆)、B(作品判定の留保)、C(レンブラントの真筆ではない作品)に分類している。現段階において、対象となった280点中A判定となっているのは146点で、B判定には12点、そしてC判定には122点が選定されている。この判断によって、約半数の作品が真筆から除外されたことになるわけだ。


「レンブラント風」
だが、そもそも何故このような洗い直しが必要になったのだろうか。それは、20世紀以降解明されつつある、レンブラントという画家独特の絵画制作の手法と関連付けられる。 「レンブラント作」と認められる作品の数は、19世紀の後半には300点強と考えられていた。その後20世紀の初頭まで「レンブラント作」の数は増え続け、一時は1,000点を数えるまでになった。
しかし、1930年代以降のレンブラント研究で、その全体数は減少の一途をたどる。1935年にブレディウスによる『レンブラント作品全集』(Bredius 1935/1969)によって630点が選定されて以降、1960年代に出版された2つのカタログ・レゾネ(全作品目録)ではそれぞれ562点(Bauch 1966)、420点(Gerson 1968)にまで減少していった。
これは、単に研究が進んで「贋作」が識別できるようになったというわけではない。これらの研究でレンブラントの真筆から除外されていった多くの「レンブラント風」の作品は、悪意ある模倣者によってでっち上げられた「ニセモノ」ではなかった。実は、それらの作品は、レンブラントのアトリエ(工房)にいた助手や弟子たちによって、彼の監督の下に制作されたものであったということが、近年になって判明しつつあるのだ。

RRPが最も注目したのは、まさにこの点であった。彼らは、レンブラントのアトリエでの制作活動の実態を明らかにし、レンブラント自身による作品と、弟子や助手たちの手による作品とを分類しようとしたのである。

黄金の兜をかぶった男
 『黄金の兜をかぶった男』
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